チェジュ島西の海上の様子を伝える天気予報が流れる地元のニュースを、寝起きのぼんやりした頭で聞き流しながら、「家」について考える。

夏にはもう、この実家も道路になる。
うちの御大が眺める庭も、その庭に植わる、椿も蘇鉄も躑躅も海紅豆も。
誰がどんな風に便利になったり、もしかすると命を繋いだりできるのか知らないけれど、私や区画整理のエリアに該当した家のひとびとの、個人的過ぎる記憶を埋め立てて。

どこにあっても暮らしは続き、えにしが繋がり、その町に吹く風に吹かれて、誕生日を祝ったり、眠ったり、笑ったりしながら生きていく。

力づくに理不尽にその場所を奪われて、何もわからないまま、そんな日々に放り込まれたひとたちもいる。
そのことを伝え続けるひとたちもいる。
私はそういうひとたちの話を聞きに出かけ、そうして出来た資料を扱ったり、保存したり、調査したりすることもある仕事をしている。

私の仕事と、暮らすこと、家を創ること。こんがらがってころころと、なにやらひとつの毛糸玉になり、ひとつの方向に転がりはじめた夏のはじまり。

チェジュ島西の海上の様子を伝える天気予報が流れる地元のニュースを、寝起きのぼんやりした頭で聞き流しながら、「家」について考える。

夏にはもう、この実家も道路になる。
うちの御大が眺める庭も、その庭に植わる、椿も蘇鉄も躑躅も海紅豆も。
誰がどんな風に便利になったり、もしかすると命を繋いだりできるのか知らないけれど、私や区画整理のエリアに該当した家のひとびとの、個人的過ぎる記憶を埋め立てて。

どこにあっても暮らしは続き、えにしが繋がり、その町に吹く風に吹かれて、誕生日を祝ったり、眠ったり、笑ったりしながら生きていく。

力づくに理不尽にその場所を奪われて、何もわからないまま、そんな日々に放り込まれたひとたちもいる。
そのことを伝え続けるひとたちもいる。
私はそういうひとたちの話を聞きに出かけ、そうして出来た資料を扱ったり、保存したり、調査したりすることもある仕事をしている。

私の仕事と、暮らすこと、家を創ること。こんがらがってころころと、なにやらひとつの毛糸玉になり、ひとつの方向に転がりはじめた夏のはじまり。

うちのによい

夏には区間整理で道路になってしまう実家に、整理作業のために帰省中。
押入の、品々を振り分ける。黙々と。

階段は、記憶の中よりうんと狭くて低い。ひいやりとした足裏の感触と、うちのによいは変わらない。

このうちに暮らしたことはない愛猫は、同居するニンゲンのによい素に敏感なのか、日頃の用心深さは影を潜め、のびのびとくつろいでいる。
機密性が高く、風の抜けない都会の部屋より、不思議な音(竹やぶが風に騒ぐ音や、山鳩やその他知らない鳥の声や)が始終周りを取り囲む此方の方が、穏やかにいられるんだろう。

昔、階段で。宿題をしたり、お午睡をしたり、作戦を練ったりした。
実家は、家族の秘密や、記憶や、ガラクタにまみれた歴史で埋もれている。

新幹線で日常に戻る時、私の纏う空気には、この階段で嗅いだによいが混じっているんだろう。
しかしでも、このによいはもう、次の夏には消えてしまって、もう。
二度と再び、鼻を掠めることはないのだ。

うちのによい

夏には区間整理で道路になってしまう実家に、整理作業のために帰省中。
押入の、品々を振り分ける。黙々と。

階段は、記憶の中よりうんと狭くて低い。ひいやりとした足裏の感触と、うちのによいは変わらない。

このうちに暮らしたことはない愛猫は、同居するニンゲンのによい素に敏感なのか、日頃の用心深さは影を潜め、のびのびとくつろいでいる。
機密性が高く、風の抜けない都会の部屋より、不思議な音(竹やぶが風に騒ぐ音や、山鳩やその他知らない鳥の声や)が始終周りを取り囲む此方の方が、穏やかにいられるんだろう。

昔、階段で。宿題をしたり、お午睡をしたり、作戦を練ったりした。
実家は、家族の秘密や、記憶や、ガラクタにまみれた歴史で埋もれている。

新幹線で日常に戻る時、私の纏う空気には、この階段で嗅いだによいが混じっているんだろう。
しかしでも、このによいはもう、次の夏には消えてしまって、もう。
二度と再び、鼻を掠めることはないのだ。

特別な、バラ。


高慢で弱く、さみしいバラは、
途方に暮れて旅に出る王子を止めることも叶わず。
星になって再会を果たすことを選んだ彼を、バラはどんな心で迎えたのか、はたまた迎えられたのか。

幼い。拙い。なぜに切ない。

特別な、バラ。

高慢で弱く、さみしいバラは、 途方に暮れて旅に出る王子を止めることも叶わず。 星になって再会を果たすことを選んだ彼を、バラはどんな心で迎えたのか、はたまた迎えられたのか。 幼い。拙い。なぜに切ない。

雨の日コンクリート

西向きの小さい部屋から越したのは、運命の出会いをした黒い小さいケモノと暮らすためだった。
南向きの古いけど広くて窓が沢山ある部屋は、風が気持ちいいけど景色が悪い。
三方を隣接するマンションの壁や、ベランダや、共有スペースに囲まれていて、空気の入れ替えは出来ても、落ち着かない。

それでも、隙間に見上げる空には飛行機も通過するし、月も浮かぶし、星もまたたく。

終電続きの毎日からようやっと解放された、連休初日は、夜のうちから雨だった。雨を言い訳に、朝寝坊の日中からずっと、黒いケモノと床に転がっている。
退屈して窓辺から眺める世間は、ずっと雨に濡れている。
向かいのコンクリートの壁は、晴れの日のそれにはない、寂びしさが滲んでいる。